コラム

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[バックナンバー]
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#024 2023年3月21日
今オプションを売ろうとするあなたへ

#023 2023年3月12日
FPが使いたい自然な英語

#022 2023年2月24日
コロナ禍後の米国で感じたクレカ利用時の変化

#021 2023年2月8日
その後の大手信託銀行ファンドラップ体験記

#020 2023年1月25日
細分化される都市部近郊の土地を見て想うこと

#019 2023年1月12日
資格試験合格への正攻法

#018 2022年12月24日
「譲渡所得」という迷宮にようこそ

#017 2022年12月14日
お金にまつわるアメリカの話で日本でも定着しそうなこと

#016 2022年11月23日
FIRE=Minimalist x FP

#015 2022年11月10日
マイナンバーが果たすべき役割

#014 2022年10月26日
或る優秀なアメリカの弁護士

#013 2022年10月1日
「家族信託」に群がる人たちへ

#012 2022年9月14日
シェフの気まぐれサラダとファンドラップ

#011 2022年9月2日
英語に直すと視界良好に見えてくること

#010 2022年8月22日
分譲マンションは導火線がついた爆弾か

#009 2022年8月7日
入国審査で怒る外国人とNISAかiDeCoで悩む日本人

#008 2022年8月2日
最強セールスに簡単に屈した話

#007 2022年7月25日
「水道局の方から来ました」みたいな生命保険営業

#006 2022年7月19日
「不安商法」と「共感商法」

#005 2022年7月7日
不思議な「お得」

#004 2022年6月28日
日米クレジットカード制度の比較

#003 2022年6月15日
非正規社員雇用契約と定期借家契約の相似性

#002 2022年6月4日
選挙で買収される有権者と仕組債を購入する投資家

#001 2022年5月20日
任意継続被保険者制度のルールと禁煙ホテルの張り紙

コラム一覧

#024 今オプションを売ろうとするあなたへ

あなたはプットオプションを売り新規に株式を買おうとしている方ですか?

それともコールオプションを売り保有株を売ろうとしている方でしょうか?

前者には「ターゲットバイ」、後者には「カバードコール」と素敵な愛称までついているようですが、私の話を5分だけ聞いてください。

オプション取引は証券会社や取引所によって積極的に宣伝されていますね。

しかしそこでの「指値の成否を問わずプレミアムという確定利益が付いてくるお得な取引」という説明は本当ですか?

今オプションを売ろうとするあなたへ。

オプションの売りで得られるプレミアムは、誰が何を目的にあなたに支払うものなのかを考えたことがありますか?

オプション売取引はプレミアムが必ず貰えること以外はふつうの指値取引と何も変わらないという夢のようなwonderland(不思議の世界)なのですか?

お答えします。

先ず、あなたが売るオプションを買ってプレミアムを支払ってくれる人は、平時を超えるような損失が発生する、または大きな利益が取れる時に備えて、小銭で喜ぶあなたを「保険」として利用する方々です。

すみません、失礼な言い方をして。

でもオプション売取引の推奨セミナーで使われるチャートを思い出してみてください。

いわゆるボックス相場で小さく上下を繰り返すものですよね。

要は保険機能が発動しないで済む相場です。

これであれば「保険引受人」のあなたは指値売買の繰り返しで利益を上げると同時にオプションプレミアムという名の保険料まで貰えて幸せです。

しかし上でも下でも相場が「突き抜ける」ことを考えたことがありますか?

オプションの買い手側はいつもそのことを考えています。

今オプションを売ろうとするあなたへ。

オプションを売るあなたは、まさか医療保険とかに加入していませんよね。

毎月何千円かの保険料を支払えば、病気や怪我の際にまとまった額の保険金を受け取れるやつです。

医療保険で保険会社が受け取る保険料は、あなたがオプションの売リ取引で受け取るプレミアムと同じです。

同様に予期しない病気や怪我の際に保険会社が加入者に支払う保険金と、大きな市況変動時に、オプションを買った相手の大損失をあなたが肩替わりする(またはあなたの大儲けを渡してしまう)仕組みも同じです。

よって私にはオプションを売り他人のリスクを引き受けるような勇気のあるあなたが、他方で医療保険などに加入するとは思えないのです。

2023年3月10日(金)の日経平均終値は6営業日ぶりの反落となり28,143円でした。

そして日本時間の翌11日(土)朝に、ある米銀破綻のニュースが飛び込んできました。

その直前まで週明けの株式市場に買いの指値を入れようと考えていた人は、このニュースによって週明け13日(月)朝は様子見を決めたことでしょう。

しかしプットオプションを既に売却済みの人はその取引ルール上、指値を撤回できませんので、なすすべもなく高値掴みとなりました。

この情景はオプション売り取引の本質を理解する上で重要です。

最新情報に反応して敏感に変動するマーケットに対しては「臨機応変な朝令暮改力」がとても大切ですが、オプションを売却してしまった人にその力はもう残されていません。

市況の急変が迫ろうとも、約束した(1週間などの)期間中に指値を撤回することは許されません。

それがプレミアムの代償ですから。

今オプションを売ろうとするあなたへ。

オプション売り取引は、魔法の国のwonderlandではありません。

それでも投資は自己責任ですから、小銭欲しさにオプションを売るのはもちろんあなたの自由です。

しかし最後にもう一度「貧すれば鈍する」という諺を思い出して下さい。


追記:


私は過去から現在まで金融業界に関わったことがありません。

とある大手総合商社にて典型的な市況商品の現物グローバルトレーディングに長年携わってきました。

その仕事は「同業競争相手よりも高く買い安く売り自分も儲ける」スキル勝負の世界でした。

そのスキルとは商品市況に対する見越力、傭船力と共にいかに上手くオプションを取引先から取得するかというものです。

例えば、輸出者からは市況よりも多少高く買う代わりに購入数量に関して、輸入者には市況よりも少し安く売る代わりに商品受渡月に関して、一定の幅でオプションを個別交渉で獲得していきます。

しかしその商品市況がいわゆる凪(なぎ)の状態であると、いくらオプションを確保していても利用機会がなく少額な損失が発生します。

一方、市況が大きく動く時であれば、数量や受渡月のオプション発動を駆使して莫大な利益を得ることができます。

いわば小さく負け続ける中で、年に数回は訪れる大きく勝てるチャンスを活かして年間利益を確保するような仕事です。

このような職歴の私には、オプションの売取引を真顔で推奨する記事や動画等が筋の悪い冗談にしか映らないのです。

2023年03月21日

#023 FPが使いたい自然な英語

不自然な英語を見かけることがあります。

それはスペルや冠詞使い等の間違いだけでなく、日本語の直訳で意味不明となったもの、その場にそぐわない堅苦しすぎる表現、その反対にカジュアルすぎる表現等も含みます。

FP6分野からよく使う日本語を1つずつ選び、お勧め英語と共にネット検索等でヒットする表現を検証してみました。


第1分野:ライフプランニングと資金計画

〇 FPがよく使う日本語:「可処分所得」
〇 お勧め英語:「take-home」

個人キャッシュフロー表は可処分所得、すなわち収入から税金と社会保険料を差し引いた金額をベースにしますが、直訳するとnet income, disposable income 等になります。 しかし個人相談での質問等では、手取り収入を意味するtake-homeという表現がカジュアルでよい気がします。

例文:How much is your take-home (pay) a year ?


第2分野:リスクと保険

〇 FPがよく使う日本語:「介護保険」
〇 お勧め英語:「nursing care insurance」

厚生労働省認定の介護保険の英訳は「Long-Term Care Insurance」であり米国でも介護保険を「LTC」と呼びます。しかし普段使いでは「nursing care insurance」という表現の方が分かり易いでしょう。公的保険という意味では最初にpublicを付ければ明快です。

例文:Does your country have any public nursing care insurance systems?


第3分野:金融資産運用

〇 FPがよく使う日本語:「定期預金」
〇 お勧め英語:「CD」

CDは「Certificate of Deposit」の略語であり、正式和訳は「譲渡性預金」となり正確にはいわゆる定期預金とは異なります。ただし定期預金ぽい響きのある「Saving Account」は米国英語では普通預金口座を意味し、実質的に定期預金に該当するものが「CD」です。単に「Certificate」とだけ呼ぶ時もあります。

例文:What do you think of this CD whose interest rate is now over 3% ?


第4分野:タックスプランニング

〇 FPがよく使う日本語:「確定申告」
〇 お勧め英語:「tax filing」

確定申告の正式英訳はその申告書の名称から「(final) tax return」ですが、日常シーンではシンプルに「tax filing」という表現を使います。ちなみに確定申告の時期は「tax season」と呼ばれます。

例文:I completed filing (又はdoing) my taxes of the last year.


第5分野:不動産設計

〇 FPがよく使う日本語:「自宅」
〇 お勧め英語:「primary residence」

今度は敢えて硬めの表現にしてみました。「居住用財産(自宅)」に対してはいろいろな税制上の優遇措置があります。「本当にそこが自宅ですね?」との気持ちを込めての表現です。

例文:If it is your (owned) primary residence, you can enjoy several tax breaks.


第6分野:相続・事業承継

〇 FPがよく使う日本語:「相続の準備」
〇 お勧め英語:「estate planning」

検索では「inheritance preparation」が最初にヒットしましたが、かなり直訳調で不自然に感じます。一方「estate planning」というと不動産設計のように聞こえますが、遺産分割対策、後見人対策等含めての全般的な相続対策という意味合いの上品な表現です。

例文:I’ve just started my estate planning for my familiy.


追記:


私も認定者であるCFP®(Certified Financial Planner)とは、米国FPSB(Financial Planning Standards Board Ltd.)との業務提携下、世界25か国・地域に導入されている「国際資格」であり、本邦では日本FP協会が統括・管理しています。

しかし国際資格とはいえ、実務としてFPに求められる社会保障制度、個人税務、民法等の知識は各国・地域固有であるため、日本でのCFP認定者とはいえ海外で活用できる機会は限定的です。

それは仕方がないことなのですが、せめてFPとして万国共通で使う表現等を総本山の米国英語にてリスト化して、その一定レベルでの使いこなしも認定要件の1つに加えることが「国際資格」と銘打つ以上は必要ではないかと、個人的には思います。

2023年03月12日

#022 コロナ禍後の米国で感じたクレカ利用時の変化

コロナ禍以降初めて米国を1週間の日程にて訪問しました。

以前に「日米クレジットカード制度の比較」という記事(https://note.com/yamada_nick/n/nf567b07fef04)を投稿したことがありましたが、今回は米国でのクレジットカードの日用使いに関してコロナ禍後の変化についての報告です。

尚、今回訪問先は私が数年前まで長年に渡り居住していた米国南部ではなく、西海岸シリコンバレー地区です。

よって今回の短期訪問にて感じたことをして米国全体が同じように変化したとはもちろん語れず、その点は差し引いて頂ければと思います。

先ず感じた変化は、食事や買物後にカードを店員に手交するのではなく日本と同様に本人が直接操作する方法が主流になっていたことです。

ただし日本では利用客がカードリーダーに差し込むのに対して、私が利用した店舗では軽く浮かしてタップする方式を多く見かけました。

これにより店員はお客のクレジットカードを、お客はカードリーダーに一切接触しないで決済することかできます。

しかし非接触型カードは近づけるだけでカード内に埋め込まれた情報が読み取れてしまうために、混雑した場所でのスキミング被害に遭う危険性が高まります。

従って、カードから発信される微弱な電波を遮断するRFID(= Radio Frequency Identification) Protection Walletなるものも売っていて驚きましたが、帰国後に調べてみると「RFID財布」は日本でもAmazonなどで既に販売されており、自身の情弱ぶりを嘆きました。

さて、コロナ禍前のクレジットカード利用と比較して最大の変化と感じたことは、利用客の要求がない限りカード利用控えのスリップをもらえなくなっていたことでした。

これも非接触が目的なのでしょうが、控えコピーなしに複数店舗でクレジットカードを利用すると自分の合計出費額を把握できなくなりますし、そもそも正しい利用金額がチャージされているのかすら不安になります。

しかしその不安が杞憂で終わったのは、スマホに入れているクレジットカードのアプリに1分も経たないうちに利用履歴が反映されて、そこで記録を即座に確認することができるからです。

実際に私も米国で発行された現地米ドル預金にひも付いたクレジットカードを利用していたのですが、直ぐに反映されてきました。

参考まで、帰国後に日本発行のクレジットカードを日本国内で利用後どの位のタイムラグでアプリの利用履歴に反映されるかを実験してみました。

その結果は、少なくとも私が利用しているカードでは早くても数時間、遅いカードだと数日かかるケースがあり、カード利用時に「控え」を手渡されないと心配な状況です。

ところで米国慣れしていて且つ最近はコロナの影響で渡米の機会がない方は、「紙のコピーなくしてレストランでのチップ精算はどう処理するのか?」という疑問を持つことでしょう。

その答えは、これも個人的には驚きだったのですが、精算時に「チップは18%?20%?22%?それとも任意の金額?」というメッセージが出てきて、そこからタップして選択するということでした。

私の少し前の常識では、米国のレストラン等で普通のサービスならば15%、とても良ければ20%、酷いと感じたら抗議の意味を込めてゼロから数%を臨機応変に書き入れる事だったのですが。。

もちろん「任意の金額」を選択して15%とすることも可能ですが、店員からは「面倒くさい人」との視線を浴びますし時間もかかります。

そしてまた日本の「松竹梅戦略」ではありませんが、18、20、22%の三択を示されて最低の18%を選ぶことや、ましてや任意を選択して15%とすることには心理的抵抗感も出てきます。

よって今回、一般旅行者で小心者の私は真ん中の20%を選んでいたのですが、コロナ禍に便乗したこの「選択制チップ値上げ戦略」が米国を覆う歴史的インフレの一因となっていることに間違いありません(笑)。

追記:

以前「アメリカのラーメン3,000円」のネット記事を読んだことがありましたが、街の外看板メニューを見る限りその通りでした。

訪問時の為替は1ドル130円程度でしたが、ラーメン1杯15~20ドルでしたのでチップとSALES TAXを併せて30%とすると3,000円前後となります。

またファーストフードでのセットメニューは税込みで11~12ドルでしたので、1,500円前後というイメージです。

異常なのは高すぎる米国か、それとも安すぎる日本なのか、購買力平価的な価格調整は今後二国間でどのような地殻変動を以て決着していくのでしょうか?

バラマキの結果としての日本国債発行残高の異常な膨張とそれを支える日銀財政ファイナンスを強く憂う「常識人」の私にはその結末が見えるような気がします。

2023年02月24日

#021 その後の大手信託銀行ファンドラップ体験記

昨年(2022年)9月に「その高コストから金融リテラシーが高いと自負している人たちは見向きもしない」とされている大手信託銀行のファンドラップを最低販売金額500万円分購入してみたという「シェフの気まぐれサラダとファンドラップ https://note.com/yamada_nick/n/neea2bdbcc9d3」を投稿しました。

今回はその後の報告ですが、当時購入した理由は以下の通りです。

理由1:手数料負けしないで脱出する方法を見つけた。

理由2:ファンドラップ商品購入経験なしに批評することを避けたかった
(というのは嘘で、ブログのネタにしてみたかった)。

理由3:不透明な金融情勢の中で他人のせいにできる投資をしたかった。

結論から入りましょう。

運用開始から4か月弱経過した12月末時点の結果は(写真1)の通り67,317円の損失でした。

投資顧問報酬(1.54%)が差し引かれるファンドラップ口座500万円に対して1.35%のマイナスですから運用自体は黒字であったかの誤解を与えそうですが、それは違います。

9月頭に投入した500万円の資金は「エントリー分散型」であり、3か月毎25%ずつの運用開始ですので、12月末段階では半分の250万円は「待機資金」であり、運用開始された250万円も125万円は4か月弱、残りの125万円に至っては1か月弱という短期間での結果となります。

さらに「投資顧問報酬」の引落しも現状反映されているのは1,370円だけでこれから本格化しますので、運用成績は「見事に撃たれている状況」です。


(写真1)

ファンドラップ購入理由3に、「他人のせいにできる投資をしたかった」ことを挙げていましたので、ここは担当ファンドマネージャー様に一言毒づかさせて頂きたいと思います。

「あのさあ、3か月毎に愚直に速攻で25%ずつ資金を投資商品につぎ込まなくてもよかったんじゃない? “待つのも相場”って言うでしょ。いや分るよ、投入許可のでた資金は早々に運用開始して一刻も早く投資顧問報酬と信託報酬を課金したいのは。でもサラリーマンとはいえ、もう少し工夫できなかったかなあ」

失礼しました。

ファンドラップ購入理由2は「ブログのネタにしてみたかった」でしたので、素直に感謝申し上げたいと思います。

「ブログに追加投稿したくなるような運用結果報告をどうも有難う」

さて、ファンドラップ購入理由1は「手数料負けしないで脱出する方法を見つけた」でした。

これは凶器のような投資顧問報酬1.54%+信託報酬平均0.45%程度の合計約2%を銀行様に支払っても、分散エントリーを選択したので購入後6か月弱以内に脱出すれば、ファンドラップと抱き合わせ購入した年利7%の3ヶ月定期預金500万円分の利息で逃げ切れるという計算でした。

実際(写真2)の通りキャンペーン定期はその役割を粛々と果たしてくれたのですが、この並記された2つの数字を眺めるとあることに気が付き舌を巻きました。

それは抱き合わせ定期預金で稼いだ税引き後70,299円の利息と12月末現在のファンドラップの評価損67,317円の差額は僅かに2,987円だけであり、合計金額は投入した1千万円ちょっとプラス位であるということです。


(写真2)

冷静に考えてみると、俳優としてもご活躍中の佐藤浩市さんや木村文乃さんの大手信託銀行ファンドラップの運用マネージャーが下手っぴな訳がありません。

きっと最初の4半期毎報告書ではその実力を逆説的に魅せようと「これが今回の芸術的な落としどころ」と、初期合計投入金額1千万円に合わせてきたのでしょう。

また、解約してしまうと(写真3)のような毎月送付されてくる健康管理情報も掲載の素敵な会報をもう読むこともできなくなります。(実はまともに開いたことはありませんが)

 


(写真3)

私は決めました。

ここはでーんと構えて、このファンドラップを最低1年は継続して本気の実力を見せてもらうことを。

昨年末には銀行担当者のお姉さんから「ご心配をおかけしております」と、まるで自分の過失を謝罪するようなお電話まで頂きました。

この1.54%の投資顧問報酬は「素敵な会報誌代」や「お詫びの電話代」も含まれていることを忘れてはいけません。

本年9月末の運用報告をご期待ください。

追記:

大手信託銀行のロビーや個別面談ブースには大手通信会社のスマホショップと同じ空気が流れています。

そこは、やれ暗証番号なんか覚えていないと大騒ぎしていたかと思うと、新たな契約を終えての帰り際に袋いっぱい詰められた日用品をもらいご満悦なお年を召された方々の素敵なサロンの場です。

信託銀行の一角にスマホショップも併設し、ワンストップ化すれば通信業界とWIN-WINの関係を築けるのではないでしょうか。

いつか佐藤浩市さんに銀行でお会いする機会があれば本案を提言してみようと思います。

2023年02月08日

#020 細分化される都市部近郊の土地を見て想うこと

相続が発生したのでしょうか。

都心への交通の便が 「それなりに」 良い沿線の古屋が解体されてしばらくすると、和製英語でパワービルダーと呼ばれる戸建て住宅販売業者による新築工事が始まる風景を見かけることがあります。

しかし200㎡はあろうかと思われるその土地に、新たな庭付き一戸建てが建築されることはほとんどありません。

これは仮にその土地の価額が30万円/㎡だとすると、200㎡で6千万円の評価ということになり、相応の建物を新築して利益をのせると1億円程度になってしまうからです。

今や首都圏在住で1億円の予算を持つ住宅購入希望者の主流は「多少面積を妥協しても都心そのものでの戸建てやマンション」狙いであり、「都心への交通の便がそれなりに良い沿線での200㎡の戸建て」ではありません。

よって郊外の土地は分筆(=土地を分けること)されて100㎡ほどの2つの住宅となり、また場合によっては70㎡弱に3分筆されて一棟5,000万円程度で複数の建売住宅として販売されていきます。

この販売価格帯であればより幅広い購買層が相手となり、戸数は増えても業者として早く確実に売却することが可能になるからです。

「分筆販売戦略」をスムーズに進めるには土地の形状が重要です。

具体的には、その土地が下図(A)のようにきれいな長方形で且つ長い方の辺が道路に面しているのが理想的です。

正面道路に向かい土地を二等分して床面積100㎡程度の2階建て家屋を2棟建築することができるからです。

さらにその土地が建蔽率や容積率制限の緩い用途地域であれば、下図(B)のように3等分して、1階にはビルトイン式の駐車場と納戸、2階にLDK、3階に2~3の居室という、いわゆる「ペンシルハウス」を3棟建築し販売していく作戦も、上述の通り採用されています。

問題となるのはせっかくの長方形の土地であっても、道路に接面している部分の辺が短く奥行きが広い場合です。

この場合、道路に面して2等分すると極細のいびつな長方形となってしまいますし、道路側と奥側で分筆してしまうと奥側の土地は接道(=幅員4m以上の道路に2m以上接する)義務を果たせません。

よって苦渋の選択として行われるのが下図(C)のような分筆であり、右側の土地はその形状から「旗竿地(はたざおち)」と呼ばれています。

旗竿地の問題点は、路地上部分に土地面積を取られるので有効宅地部分が限定されてしまうこと、一般に日当たりや風通しが悪い場合が多いこと、火災発生時の消火困難性などですが、更には将来に建物の取り壊し再建築をする際の費用が高額になることが挙げられます。

その理由は、2棟まとめての住宅建築時には奥側家屋の構造部分を完成させてから道路側家屋を建てることが可能なのに対して、完成後は奥の土地に重機が入ることが出来ないため、古屋解体などが手作業になるためです。



「分筆分譲ブーム」は戸建住宅への一定の根強い人気もあり、もうしばらくは続きそうです。

江戸時代には「分地制限令」といい、農民の年貢負担能力を維持する為に田畑の分割を禁止する法律がありました。

現代でも、街の景観を守るために「建築協定」という一定の行政手続きにより関係者が自主的に「最低敷地面積」に制限を加えている街区も存在しています。

しかし「美しい街並み」の代償は「市場流動性の低下」です。

パワービルダーによる分筆分譲作戦も、分筆による需要の掘り起しという経済合理性に基づいた行為であり、それに背く制限は何らかの副作用を生み出します。

建築協定が「限界ニュータウン問題」の一因にもなっている場合があるとも聞いたことがあります。

「不動産2025年問題(=2025年になると団塊の世代が全員後期高齢者となり大相続時代が始まる一方、相続人となる団塊ジュニア世代も50歳以上となり新規住宅取得層ではなくなる問題)」はマンションだけでなく戸建て住宅にも当然影響します。

住宅用地の需給バランス緩和が少子高齢化の更なる進展により進むと「見えざる手」による作用で、分筆された土地への合筆(=複数の土地を1つにまとめること)ブームが訪れるのでしょうか?

追記:

上図(C)のような旗竿地における合筆では、不動産用語でいうところの「限定価格」を巡る攻防戦が予想されます。

限定価格を不動産鑑定基準の定義から意訳すれば「不動産の併合または分割等により、通常の市場価格から乖離して限定的に生じる価格」となります。

旗竿地の合筆では、路地上部分が有効宅地に変化することにより土地の価値が相応に増加することを意味します。

旗竿地を売る方と買う方のどちらがその価値上昇の受益者となるのかは、双方の不動産価値へのインテリジェンスと交渉能力で決まることでしょう。

特に売買の片方だけがプロの業者である場合には、他方の一般人が貧乏くじを引かされないように気をつける必要があります。

2023年01月25日
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