#005 不思議な「お得」

時々とても不思議なコマーシャルを見かけることがあります。

それはいわゆる買取り業者の「その場で5千円キャッシュバック」とか「今なら買い取り価格10%増し」のような広告です。

買取りの対象が貴金属など価格自体にある程度の客観性と透明性がある商品であれば理解できなくもありません。

しかし、中古のバイク、パソコン、着物等は当然個々の状態や希少性などによる評価となるのでしょうから、常識を使い考えれば「通常の買い取り価格からキャッシュバック分を安く買い叩いているだけ」ということが想像できます。

広告を出す業者も不思議ですが、それもこのような「キャンペーン」に喜んで応じる人が存在するからなのでしょう。

買取り業者の広告のような不思議感はありませんが、令和の時代になってもまだ流れるテレビショッピングでの「メーカー希望小売価格」からの大幅値下げ的な広告にも、「勝手に決めた希望価格から値引きをされてもなあ」と感じます。

また微妙に不思議なお得感だと思うのは、大手デパートや旅行会社による「積立金友の会」のような仕組みです。

「毎月1万円積み立てると1年後に1万円のボーナスが付いて13万円のお買物券や旅行券になります」みたいな設計ですが、その買物券や旅行券を使えるのがその発行母体に限られている以上、本質的にどう得なのかはよく考えた方がよいでしょう。

もしかしたらその買物券で購入した13万円の品物と同じものが、その隣のお店では実は11万円で売っているかもしれません。

このような「不思議なお得戦術」は金融業界でもよく見かけます。

「当行指定の投資信託をご購入頂ければ同額まで年利7%の3か月特別定期預金に申し込めます」的キャンペーンにおいて買うことのできる投資信託の販売手数料はだいたい2~3%で、保有時にかかる信託報酬も1%以上はする高額なものばかりです。

一方金利7%の定期預金は3か月間だけですから、元本は税引き後で実質1.39%しか増えません。その1.39%をだしに、購入して1年保有するだけで3~4%の販売と管理に関する手数料がかかる投資信託を買わせようとするのですから恐れ入ります。

また、投資信託販売とは抱き合わせになっていない単独の高金利3か月定期も、退職金運用プラン等で時々みかけます。

さすがにこちらの金利は3か月だけとはいえ、抱き合わせ販売がない分0.5~1%程度ですが、現状の日本の金利状況からするととてもお得ですし、そこには不思議感もありません。

何故なら、金融機関にとっての預金者に支払うこのサービス金利(例えば2,000万円を3か月1%で預金する場合の税引き前金利5万円)は、それなりの規模感がある不急の現預金を持つ個人を発見するための「調査費」であり、3か月定期満期時に高額販売手数料の金融商品を売りつけるための「餌代」だからです。

つまりこの5万円はマグロの一本釣り用の餌に使うイカのようなものです。

金融機関側としてはできればその餌すら取られたくありませんので、これだけネット上の取引を啓蒙しているにもかかわらず、この手のキャンペーン商品の申し込みだけは対面を原則としており、店舗訪問時に「もっとお得なプランがありますよ」と、飲み込みかけたイカすらも口に手を入れてもぎ取り返そうとします。

どうやら「不思議そうで不思議ではないお得」を確実にゲットするには、笑顔の素敵な窓口のお姉さんやスーツをバリっと着こなした紳士に負けない強い意志と一定レベルのファイナンシャルリテラシーを持つことが必要なようです。

追記:

先日このようなキャンペーン金利定期申込時の攻防戦を実際に体験しました。

もちろん余計なものは何も買わなかったのですが、最後にご担当の方から「ご希望に沿える提案ができずに申し訳ありませんでした」と不思議なコメントを頂きましたので、「私の希望はこのキャンペーン定期だけで100%叶っております(キッパリ)」と返事をしました。

このちぐはぐなやり取りでふと思い出したのが吉本新喜劇の定番ギャグでした。
ケンカで一方的に負けている相手が去り際に「今日はこれくらいで勘弁しといたるわ」と捨て台詞を言うやつです。

2022年07月07日