#004 日米クレジットカード制度の比較

私が初めて米国に駐在したのはもう四半世紀前以上となる1995年でしたが、当時の日本人の常識で考えると驚いた個人金融システムがありました。現在その一部が日本でも常識となっていることに時の流れを感じますが、そのいくつかをこのコラムを通じて今後時々紹介していこうと思います。

最初に取り上げるテーマは「日米クレジットカード制度の比較」です。

1995年当時でも、もちろん日本で発行されたクレジットカードを米国で使用することは可能でした。

しかし本邦の日本円口座にひも付きで円転後に口座引落しがされるカードは、旅行者や出張者ならともかく、米ドル建て給与を米国銀行口座に振り込まれる駐在員にとっては使い勝手が悪く、米ドルベースでのクレジットカードが必要でした。

一方、米国で新規にクレジットカードを作成するのはいわゆるCredit Historyという過去の米国内での借金とその返済履歴のない者にとっては簡単ではなく、与信限度額数百ドル程度の少額から始める必要があり、赴任直後から出張旅費や交際費の立替が多く発生する駐在員には使えないものでした。

よって多くの日系米国現地法人では駐在員にCorporate Cardという勤務先が支払保証したクレジットカードを利用させます。

これなら勤務先の信用だけで判断されますので、赴任直後から数万ドル単位の限度額が付与されたクレジットカードを利用できるのですが、プライベート含めてそれしか使用していないと本人のCredit Scoreがいつまでも改善しないので自家用車購入時に分割払いを拒絶されたりと、日常生活に支障をきたすことも出てきます。

ちなみに私は当時、米国への派遣前から日本でAMEXのゴールドカードを保有していて、その事実を基に米国でもAMEXカードを申請しましたが「アメリカでのCredit Historyがないとだめだ」と与信枠1千ドルの審査に落ちました。

最終的にチェイス銀行発行のカードの利用と返済履歴をコツコツと積み上げ5年程度かけて3万ドル超の与信枠を保有するに至りましたが、勤務先や年収といった外形的なもので信用力判断をする日本と、個人の返済実績や信用履歴等を重視する米国の違いはとても新鮮でした。

(尚、現在はJALやANAが日系米銀と提携して日本での信用を反映した米ドルベースでのクレジットカードを発行しているようですが、そのようなカードの利用履歴や返済実績がFICO等の信用調査会社にどの程度評価されているかは知りません。)

さて、次にクレジットカード利用後の返済方法ですが、これも日米で大きな違いがあります。

日本では「一括払い」「ボーナス併用払い」「リボルビング払い」等を選択して登録された銀行口座から決まった日に引き落とされるのが一般的ですが、米国では「Minimum Payment」と「Payment Due」だけが毎月通知されて、その情報に基づき、自らがその月の返済額をminimum payment以上で決定して銀行口座から振込・振替手続きを取る、乃至は個人小切手を振り出して返済していくのが一般的です。

つまり、イメージ的には米国のクレジットカードは当座貸越付き銀行預金口座のようなものであり、資金に余裕がある時には毎月のPayment Due以外にも自分で適時銀行口座から支払いCredit Balanceを調整することも可能ですし、各Payment Dueまでに各月毎の利用残高を全額返済しておけばもちろん利息を取られることもありません。

個人的には米国式の方が合理的だと思い、日本の返済の仕組みも米国型に変更されるであろうと予想していたのですが、未だにその兆候が見られません。

日本では過払い金問題等リボ払い選択時の高金利が問題になることがあります。

米国でも返済を翌月以降に繰り越した毎月のCredit Balanceにかかる金利は高く、借金の総額が減らずに高金利の支払いが毎月発生する「Credit Card Debt」はひとつの社会問題となっていますので、これが日本のクレジットカード会社が米国式返済方式を採用しない理由かもしれません。

結論として感じたのは、カード発行審査基準から返済方法まで個人ベースの自己責任主義である米国と、外形的信用力判断と自動引き落としで管理する日本とのクレジットカード業界の相違は、「まさに日米社会システムの違いの縮図」ということでした

追記:

日本でも最近デビットカードという銀行口座預金残高に応じた決済システムが利用され始めましたが、米国では1995年当時でも当たり前に存在していました。

お店でカードを出すと店員から「Credit or Debit ?」と言われ、最初は何を聞かれたのか分からなかったことを思い出します。(もうひとつ最初分からなかったのが「Paper or Plastic ?です。こちらは「紙袋かレジ袋か、どっちに入れて欲しい?」です。。)

2022年06月28日