#016 FIRE = Minimalist x FP

FIRE ( Financial Independence, Retire Early)「経済的自立を達成して早期に退職する」という概念が日本でも語られ始めてから久しくなりました。

このコンセプトが多くの人たちを惹きつけて止まない理由の1つは、完全に仕事をやめて趣味等のみに走るニュアンスがある「アーリーリタイアメント」でもなく、生活のために一定の就労が退職後も必要という意味合いを感じさせる「セミリタイアメント」とも異なるからです。

すなわちFIREの真髄は「生計維持の為にはもう働く必要はない。今後は他人や時間に拘束されない範囲で好きな仕事や投資などをするかどうか自由に決めていく」という「経済的制約から解放されたライフステージへの到達」というところにあります。

当然、最大の課題は「生きるために働く必要がない状態を作り上げる方法」ということになりますが、巷に溢れるFIREガイド本によく紹介されているのが所謂「4%ルール」です。

これは「年間生活費の25倍の金融資産を築いて年間利回り4%で運用する仕組みを作ることができれば、元本を棄損することなく永遠に暮らせる」という循環的計算です。

しかし現実には金融資産配当所得は分離課税選択で所得税と住民税の合計20%がかかりますし、不動産所得は5~45%の超過累進所得課税+住民税10%が発生します。(いずれも復興特別所得税2.1%を除く)

更にはFIRE後も別途、介護保険料を含む国民健康保険料と国民年金保険料の支払い義務は続きますので、現実的に4%ルールは、税や社会保険料支出にも耐えうるより大きな資産を築くことができるまで待つか、4%以上の高いリターンを長期安定的に実現することが必要となり遠のいてしまいます。

そこでFIRE実現を早める他の方策として考えられるのが、年間生活費そのものをより下げてしまうことと、リタイアメント後の資産元本維持にはこだわらず、少しずつ取り崩しても枯渇しない設計にしてしまうことです。

このアプローチと親和性が高いのが「ミニマリスト的性向」と「FP的インテリジェンス」の実践です。

まずは「ミニマリスト的性向」です。

こちらもFIRE同様に10年程前から多く語られるようになった生活スタイルですが、苦痛や我慢を伴う節約生活とは異なります。

ミニマリストに関しても多くの出版物が出ていますので、部屋にまったくモノを置かないような極端系ではない2~3冊の書籍を先ずは読んでみることをお勧めします。

基本概念は「モノ所有へのこだわりと訣別することによる快感」です。

次に「FP的インテリジェンス」です。

ミニマリスト的性向がFIRE実現の定性的な観点からの鍵であるならば、こちらは数字を使う定量的な鍵と言えます。

FP的インテリジェンスとはいわゆる金融リテラシーに限らず、社会保障制度、個人税制、不動産運用等への幅広い知識と理解を意味します。

そのインテリジェンスを基に作成する生涯キャッシュフロー表により「リタイアメント後の必要資金とその取り崩し具合の可視化」が可能となります。

「人生100年時代」と言いますが、日常生活に制限がない健康寿命の平均は男性の場合73歳程度(女性は75歳程度)だそうです。

高齢者となる前に経済的制約なく次のライフステージを楽しむことを実現しようとするFIREムーブメントは、今後も幅広い支持を獲得し続けることでしょう。

追記:

官公庁やそれなりの企業のトップレベルまで昇りつめ、既に十分な老後資金を築き、もう「働く」必要がないにもかかわらず、天下りや子会社幹部職への再就職を望み、交際費で平日は毎夜飲食し週末は取引先とのゴルフに興じるのが生き甲斐みたいな奇特な人々が時々います。

彼らは一見するとFIRE実践者と真逆な余生を過ごしているように見えますが、そもそも「会社が大好き」な訳ですから、FIREの定義(=「お金目的ではなく新しい生活を楽しむ」)に照らし合わせると、実は最も成功したFIRE達成者の部類に属します。

もし近くに該当するような知り合いがいれば、本人はキョトンとするでしょうが「さすがです。見事なFIREライフをご満喫されていますね」と一声かけてさしあげましょう。

2022年11月23日