#011 英語に直すと視界良好にみえてくること


日本語だとその違いがよく分からないけれども、あえて英語に直してみるとその意味が理解しやすくなることが時々あります。

まずは不動産分野からです。

金融機関で住宅ローンを組むと、事務手数料と保証料という2つの名目の費用を請求されることが通常です。

そして事務手数料型のローンは「保証料無料」をうたい、保証料型のローンは「事務手数料無料」をうたっていることも多いため、名目にかかわらず合算して1円でも安い方が良いという判断もあるかもしれません。

しかし、もし将来的に期前返済をする可能性が高いのであれば、事務手数料型ではなく保証料型ローンの方をお勧めします。

その理由を考えるために「事務手数料」と「保証料」をそれぞれ英語に直してみましょう。

住宅ローンに於ける「事務手数料」は、英語では「Origination Fee」となり、「保証料」は「Guarantee Charge」となります。

この語感の違いが意味するところは、「Origination=(ローンの)組成時」という「点」であるのに対して、「Guarantee=保証している間」という「期間」であることです。

また、feeもchargeも「費用」を意味しますが、やはりfeeには「ある瞬間に対しての」というニュアンスが強く、chargeには「一定の(サービス)期間中に対しての」という意味合いが強くなります。

こう考えていくと、住宅ローンを将来的に期前返済した場合、「保証料」型であれば結果として利用しなくなったローン期間の保証料が按分計算で完済時に戻ってくるのが道理として見えてきます。

また「事務手数料」型はあくまでもローン開始時の初期費用ということで、期前返済しても1円も戻ってこなくても仕方がないということも理解しやすくなります。

住宅ローン税額控除狙い等で、敢えて借金をして居住用財産の取得を考えている方などは、保証料型を是非検討してみて下さい。

さて、次の「英語に直してみよう」は相続設計分野からです。

「相続時に争族にならないようにする為には遺言書を書いてもらうこと」と記載されているハウツー本を読み、さっそく親に話をしてみたところ、「お前は私に死ねというのか!」と大騒ぎになってしまったというエピソードをよく聞きます。

その理由は言うまでもなく「遺言書」と「遺書」という2つの言葉の混同にある訳ですが、確かに日本語ではとてもよく似ています。

しかし、この2つの言葉を英語に直してみるとまったく異なる文書であることが見えてきます。

先ずは「遺言書」ですが、これは「Will」です。言わば自分亡き後の「意思」を相続人に書面にて明確に伝えるという手段であり、語感的には日本で流行し始めたエンディングノートに近いようなイメージです。(エンディングノートには法的拘束力はありませんので、あくまで言葉の好感度が似ているということです。)

一方の「遺書」ですが、こちらは「Suicide Note」となります。「suicide=自殺」ですので、「自殺の前に書き留めたメモ」ということで、親が「お前は私に死ねというのか」と激怒する状況にぴったりな言葉です。

相続財産の多寡とは関係なく、遺言書がないがゆえに遺産分割協議がまとまらず、日本の家庭裁判所は調停請求でどこも大忙しだと聞いています。

ここは、生前にみんなが書きたくなるような「遺言書」に代わる新しいキラキラネームをつけて、そのイメージを刷新し普及に努め、調停件数を激減させることが、司法現場での働き方改革に繋がるのではと思う次第です。

追記:

「trust」という英単語があります。

これは「(心から)信頼する」という意味であり、信託銀行のことを英語では「Trust Bank」といいます。

ベスト付きのスーツをバシッと着こなした佐藤浩市さんや中井貴一さんが資産運用の相談にのってくれる銀行ですね。

そんなポジティブイメージのtrustですが、「独占禁止法」と日本語で言われている談合等を禁止する法律は、英語では「Anti-Trust Law」となります。

要は「同業者間で裏切者を出さないと誓い合って値段を吊り上げるようなこと」もtrustな行為であり、その接頭辞にanti(=「反」)を付けて、「談合はだめよ」ということになる訳です。

「trustはantiすべき」ということで、単語のイメージが急激に悪くなってしまいました。

2022年09月02日